誰のせいだと言いたいのか/木原東子
ーー序章ーー
Yが父親の佑司と出会ったのは
三歳ごろだった
「お父ちゃんはどこ?]
「マルシャンスク」
それはソ連のどこかの寒い町だ
木炭バスに初めて乗った
佑司が帰国を許されたので
母親の夕子と出迎えにいった
佑司は急いで顔を洗いにいき
夕子はその時間をじれったがった
木炭バスの最後尾で
Yははねて喜んだ
お父ちゃんより跳ねるバスに夢中だった
そして優しいお父ちゃんにすぐに馴染んだ。
ーー本章ーー
Yは長く両親に姿を見せなかった
佑司の病が不治であると告げられたとき
Yの夫もさすがに自由を与えた
Yが父親に謝ることも感謝することも
できぬう
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