ハッピーエンドののちのひとつ/木原東子
すべてが新品である
お互いの存在が目新しい
人の世の独立した若い単位として
1
姑が時には訪ねて来る
そこではもう、息子だった子はいないのだが
姑は新婚の部屋のなにかについて
なんらかの彼女の意見を言う
新妻にはその意見はいずれにしろ無用な批判だ
2
たいていは出産、という運びになり
喜びであり試練である子が授かる
姑が孫に夢中になる、なりふり構わずご機嫌をとり
幼児の一番のお気に入りになろうとする
若い母は押しのけられて途方にくれる
3
共稼ぎで子が一人か二人
嵐の日々である
姑が電話して来る
「どうしたの、電話もしてこないね」
妻であり母であり職業人であるうえに家の嫁
華燭の宴のあと、プリンスとプリンセスのキスの後
夢に描いた日々は泥にまみれる
お互いに強いられた交友から必然的に生じる
密かにのみ語られる日常の軋み
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