御影石/木原東子
 
も高い、取り合わせは悪い
よく似て性格の善い、Yのふたりの近親の男を
早死にさせたのは自分ではないかと
Yはオカルト的なことを考えてしまう

Yの九十歳の母親は混乱して「若後家たいね」と
日頃使わぬ方言で言った
「若後家ってなんでそんな言い方を?」
Yはわずかに義妹の顔が曇るのを感じた

陽はうらうらと墓石を温めた

彼岸花の赤い道が
墓地を巡って至るところ
彼岸を指していた

「短歌」
お盆来て父ひとり居る熱き穴縁者すべてに呻吟続けば
熱風にさらされ悲し誰ひとり心頭滅却できもせず南無
墓前にて烈火の草抜き汗飛ばし怪しき会話話しに話す
向かふべき西国あらまし菩提樹の木下涼しく物理の涯てに
またも発つ彼の岸辺へとわがうからいづれ目見ゆと思ふ小夜月

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