仏像の手/吉岡ペペロ
今日ぼくは仏教遺跡に行った
ここは1200年前の仏教徒たちのメッカだったそうだ
南国の木々に縁どられた田園風景をバスで走る
途中火山灰の土石流にやられた復興中の町を通る
バスから降りる
暑くて静かな遺跡の町だった
遺跡の石段をぼくは一気に上がった
それからだらだらと回廊を周りながら石段を下りていった
石壁には仏様のご生涯のレリーフが続いていた
首の取れた石仏像の背中がなぜか気にかかる
汗がぽたぽたと石段に落ちる
下りきってあらためて遺跡を見上げた
こちらを向いた石仏像の手にしばらく目を奪われる
あのひとの指のかたちに似ていた
優しくてふくよかなあのひとの指に
清潔で官能的なあのひとの指に
まったく無抵抗のまま
ぼくは汗だくの髪の毛を掻き分けられていた
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