十一月尽/伊月りさ
燃える
椛(もみじ)を煽るように
わたしが吹きつける
燃える山
きみを理解したいので燃やした
わたし
を 理解しようと
祈りが増え
祈るための言葉が増え
言葉を行き交わせる道具が増え
科学が増え
わたしを理解しようとする人間が増え
きみは
山から下りられなくなった
ことを 哀れまれ
ああ
椛(もみじ)が燃えるように
きみを理解したい
わたしがつめたく吹きつける
わたしの溜息が、
ああ、
その鮮やかな山々を炎上させ
頬、ひるがえり
爪、薫り立ち
青空を食い散らす様が
ここからしっかりと
見える
もっと遠くまで走ろうか、
もっと遠くまで
きみが見えることを証明したい
降灰の季節
ふたたび わたしは
きみを失うのか
という自然の下(もと)にあって
失いたくない
という自然の下(もと)に
言葉を重ねていく
ことを 哀れまれ
暖をとるため 今日も
燃える
わたしは吹きつける
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