帰郷/灰泥軽茶
何年も帰っていない故郷にいる
当然私の居場所は無く
家族はそれがもう当然のように
暮らしているから
私が帰ってきても気づかないようで
いつもの口癖のような言葉を
えんえんとお互い喋っている
もうこの世にはいない
お爺さんとお婆さんだけが
どうやら私に気がついているようで
話しかけてみると
言葉は伝わらないようだが
感情だけは伝わるようで
お爺さんとお婆さんの
眼差しに懐かしさが溢れてくる
家の間取りが変わっており
奥が広く深くなっている
そちらにはあまり行かないほうがいいと
頭の隅で感じながらも進んでいくと
時代錯誤の屏風や囲炉裏が生活感を醸しており
ああここはもしかしたら
夢のなかかもしれないなと
どこかで眠ってしまったなと
気づき短い帰郷は終わる
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