希望と栄光の工場/
佐野権太
その工場には
淀むことのなく
エルガーの旋律が流れる
木管を低く震わせる安定した音色
勇壮な大河に抱かれる
誰彼の何気ない表現は
神々しい余韻を含み
小さなアイデアは
淡い発明の光を帯びる
工場の敷地の中では
すべての者が勝者であり
誇り高き英雄として讃えられる
用具の片づけを終え
家路につく清掃夫
逆光の背中から零れる
西陽は
成し遂げた喜びと
感謝に満ちている
薄い膜を広げたような
雲の彩りが
明日へ続いている
戻る
編
削
Point
(5)