カール・スピッツベルグ/m.qyi
カール・スピッツベルグ
あの風景をいろいろなところで見た。ふと、見ればいつも、同じだから。
しばらく行けば、大きな崖の上にでる...
暗い時も、明るい時もあるけれど、底無しの深淵のときも、遥かな緑の田園のうねりであるときも、オレンジの夕日に爛れたかなたであるときもあるけれど、眼下は見渡す限りの空間なのだ。
そして、いつも静かな空なんだ。
そして、いつも昔の空なんだ。
すぐ目の前を大きな帆船が一艘、ゆっくり通り過ぎていく。巨大なマストの白い帆が重たい風をはらんで。はためく、何百もの白い補助帆。手が届きそうだよ。
過ぎ去れば、いつも静かな空なんだ。
そして、いつも昔の空なんだ。
ぼくが、まだ生きていたあの時代の―。
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