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ね。昨日あんな子いたっけ」
 淡白だなあ、と困った表情で三木が火をつけると、部屋の中の埃がぱちぱちと爆ぜた。
「テレビ付けていい?」
「いいよ別に」
 ニュース番組の緩慢とした言葉の流れを見ながら、なんとなく冷蔵庫からレッドの瓶を取り出した。少ないがまだ残っているようだった。「気が利くじゃん」という三木の声を無視して文机の上に乗っているグラスに酒を注ぐ。女の体温が残っていたのか、ひどく温かった。
「おれにもくれよ」
 もうひとつに注いで手渡す。口紅がついているのがひとつだけ文机の上に残っている。

「あの子なんて名前だっけ?」
「えーっと、あれだ、あれ、エンコ、じゃないエンヤ、じ
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