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 瞼が取り払われたように目が覚めた。部屋の中にただひとつだけ置かれた文机の上に痩せた女が座っている。そのすぐ横に、三木の下卑た眼差しがあった。
 外では工事の音がやかましく、砂埃の舞うのが窓からも見える。三木が言った。「先に連絡しておいたから」
 日差しがやけに痛く感じた。

 安アパートの玄関で女が靴を履くさなかに舌打ちしてから帰ったあと、三木が大きな音を立てて胡坐をかいた。時計を見ると十時を過ぎていた。隣の掃除機の音が削岩機の音と混じる。一向にむくれた顔のままいるぼくに向かって、顔をしかめもしないで三木が「かわいかっただろ。なあ」とマルボロを取り出しながら言った。
「かわいかったね。
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