夜の斥力/伊月りさ
と上がそろわない、
どうして、
どうしてだろう、どの色もすき、一ばんじゃなくても
きれいにしたい、
きれいにしないとかたづけられないから
ながいのは、おったらいいの、そしてけずったらいいの、
そうやって社会はまわっているの、えんぴつけずりみたいに
満たされたらきちんと空っぽにしないといけないのです
満ちるだけでは死んでしまいます、
渇くだけでは死んでしまいます、
ここには月が二つあるので
明るくて眠れない 真夜中
見あげても
わたしたちは ひとつにはなれない、
遠く引き離されたら終わる
というきまりを
今夜も墨守するのです
ねむっている
まぶたの奥が満ち
くちびるの奥が渇くように
分裂して
分裂せずに
生きなければなりません
かれの前では満ち
かれの前では
からからと音をたてる真っ青な地球のどこにも等しく
沈んでいくわたし
それは
擬態
目をひらいたままねむる
いつでも
わたしはひとりしかいないということが
いやらしいもののように
封じ込められる
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