解けた氷/アヤメ
 

いつの間にか温もりも忘れ
身動きも取れず固まるほかなかった

持て余した自由と
ありふれた制御にとどめられ
腕をなくしたヴィーナスよりも 世界から遠ざかっている

削り取られる前に散らばることもなく
精一杯の力で私は空気と戯れた

角に死が潜んでいると
目隠しされた自らが情熱の果てから叫ぶ

腕を組んで考えているふりをしても
脳髄の中はまだ蓄えもなく
足りないものばかりを考えて あるべきものを忘れ去っている

他人の手でしか動かせない自分を情けなく思う
しかしその考えですら他人行儀だといつ気づくのか

わからない言葉だけが 彷徨う地平線の上で

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