終りから射す光/殿岡秀秋
 
子どものころに左手を切った
人差し指と親指の間から掌の中央にむけて
傷口から桃色の肉が見える
手を動かすと痛い

消毒するために
ヨードチンキを垂らす
滲みて痛くて
畳の上を海苔巻きになって転がる

化膿させない力があるなら
たくさん使えば早く治るかもしれない
ぼくは何度も垂らして
畳の上で海苔巻きになった

傷口が塞がるには
日にちがかかる
早く治すのをあきらめて包帯をして
ぼんやり庭を見つめた

子どものころは
危険な敵や恐ろしいけだものとの戦いに
想像の翼と剣をもって
空を飛びながら挑んだ

空想では勝つことはできたが
気持ちが砂のようにす
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