廃屋のトラクター/灰泥軽茶
 
以前は畑であった場所に

蔦に絡まり錆びだらけの

小さなトラクターにエンジンがかかった

ガタゴト ガシャグシャ
ガタゴト ガシャグシャ
 
寂寥感に覆われた廃屋を進んでいくと
椅子やテーブルがひっくり返り
箪笥だけが静かに佇んでいる

ガタゴト ガシャグシャ
ガタゴト ガシャグシャ

コンセントを抜かれた電気製品は
まるで死体のように何か物言いたげだ

錆びだらけの小さなトラクターは

煩わしさに疲れて
寂しさを好んだ
許すことに慣れてしまい
寂しさを好んだ
慣れ合いの愛想笑いに辟易して
寂しさを好んだ

と最後に独り言をつぶやき

プスンと止まった

取り残された廃屋の庭には

薊(あざみ)が棘を怒らせながら美しく咲いている

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