11月ふたりのボートが、宝ヶ池をなぞってゆく日/野中奈都
ことしはじめての雪が降る
手ぶくろもしないで
耳あてもしないで
つめたいだけの肌にする
きん、と
こめかみのあたりが痛むのを
わたしは冬のせいに
したくて
*
おんなのこどうしだから
手をつなぐのだって
クレープをわけあうのだって、へいき
帰り路の途中
宝ヶ池のまわりをぐるりと歩く
かのじょは
わらべうたを口ずさむ
少しだけ歌詞のちがっているうた
少しずつリズムのくずれていくうた
それでも
きもちよさそうにうたっているから
わたしはだまって
つないだ手を
揺らしつづけていた
*
ネジがね
はずれちゃったん、じゃなくて
からだの
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