コーラル/Lily Philia
 
のに、と
何度もおもったりした。
けれども、
たいせつなものは
もっともっとそっと
おくのおくにしまっておこうと誓ったから
この静けさだけは保たなければならなかったから
あたしはだれも乗っていない舟に
花をたくさんにたくさんに積んで
遠浅の海をひとりひいてゆく。

暮れた八月の森は
もうすっかり
やわらかな砂のなか。
やがて珊瑚みたいな色になる。







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