リベルテ/Lily Philia
 

かなたまで。
そこでなっている音が
どんどんどんどんちかづいてきて
その途方のなさにあたしは
何段あるのか知れない階を
のぼりきろうとしていた。
最初は用心深く丁寧に踏みつけて
やがて慎重さを欠いた足取りで
いとおしいものを手放すように。
さしのべられてくる
小さなてのひらのひとつひとつに
花が握られていた。
白い花。
または白い魚の尾だったのかもしれない。
黄色いひかりのなかで
青く点灯しているあたしの輪郭と
世界の輪郭がまざりあってゆく。
水に浸されたときのように
半透明になってゆくからだ。
境界線がにじんでゆく。
ながれる水の音だとおもっていたものは
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