貝殻のような夜/Lily Philia
 

ねむりの底で
しずかにひかっていた
ほどかれてゆく
ゆるやかなひとつづきの
何かの行進のなかで
あたしは
水のなかでしか
呼吸のできないサカナのように
なげだされて
ちいさく身をよじる
死んだひとたちと話をするように

言葉にできることと
想像できることは
ちがう

みえるもの
みえないもの
みえているもの
みえていないもの
みえなくていいもの

あたしは
上等の
いっぽんの
木だった

つかみあげられた
視界からこぼれた太陽が
虹のようだった

その木に名前はない







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