貝殻のような夜/Lily Philia
ねむりの底で
しずかにひかっていた
ほどかれてゆく
ゆるやかなひとつづきの
何かの行進のなかで
あたしは
水のなかでしか
呼吸のできないサカナのように
なげだされて
ちいさく身をよじる
死んだひとたちと話をするように
言葉にできることと
想像できることは
ちがう
みえるもの
みえないもの
みえているもの
みえていないもの
みえなくていいもの
あたしは
上等の
いっぽんの
木だった
つかみあげられた
視界からこぼれた太陽が
虹のようだった
その木に名前はない
戻る 編 削 Point(5)