月夜に歩いて/佐和
場面なんか振り返ると
抑えても口角あがってる
どこかの家から夕飯の支度
焦げた匂いなんか漂って
ツッコミ入れながら歩いてく
気配を感じて振り向けば
ネコ様がしずかに佇んで
帰り道半ばくらいには
ちゃんと遠く前を見て
背筋のばして歩けてる
すれ違い様 道を譲って
くれたおじさんに
ありがとうと念じるように思いながら
高校生の頃には
考えられなかった
歌の一節をおもいだす
うつむき加減に歩く少女も
きっと笑い こらえてるんだぜ
もう少女とは呼ばれない年でも
そんな風景の中のひとりに
なれたんだ と唇結んで目を細め
ポケットの鍵に指を伸ばした
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