月夜に歩いて/佐和
 

場面なんか振り返ると
抑えても口角あがってる



どこかの家から夕飯の支度
焦げた匂いなんか漂って
ツッコミ入れながら歩いてく


気配を感じて振り向けば
ネコ様がしずかに佇んで


帰り道半ばくらいには
ちゃんと遠く前を見て
背筋のばして歩けてる


すれ違い様 道を譲って
くれたおじさんに
ありがとうと念じるように思いながら


高校生の頃には
考えられなかった
歌の一節をおもいだす



   
うつむき加減に歩く少女も
       きっと笑い こらえてるんだぜ




もう少女とは呼ばれない年でも
そんな風景の中のひとりに
なれたんだ と唇結んで目を細め
ポケットの鍵に指を伸ばした






戻る   Point(8)