分かってないよ/榊 慧
「ごめん、いこっか。」
「トー、今の人、」
「ああ知り合い。たまに連絡来るけど電話ないからびっくりした。」
「かまってよ。」
「あ、あ?」
あ。
「いなせだね夏をつれてきたひと、渚まで噂走るよメッ!」
「のりのりだね。」
「ラッツ&スター好きなんだよ。完璧に歌えないけど」
でもドラッグストアで歌うのはどうかと思うよ。
あのさー、なに?大学でなんかものすごい絡まれるんだけどさ、好意的な感じで。うん。でも俺は眼中にないわけよ。うん。
「あ、帰り泊ってっていい?そのまま明日行くから、」
「いいよ。」
「じゃーちょっとひかえめに」
「僕はビールでいいから。」
「おー」
でもさあ誘われたりして、断って一人で家にいると寂しいんだよ。うん。だからありがとう。っていう、
「俺は寂しいんだ。」
ぽつん。
トーはつぶやいた。
「寂しい夜なんだ毎晩。」
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