ジャックパーセルの魂/灰泥軽茶
 
遠い異国の地で安い労働賃金により
生み出されるスニーカーたち
一日中機械の音を鳴らしながら
大量生産されていく顔はどれも同じ

それは何かのはじまりに購入したスニーカー
もう何年履いたかは定かではない
ソールの減りは甚だしい
へりのゴムやらも剥がれておりボンドで補修している
本革の赤色は鮮やかで美しかったが
今は擦れとヒビにより雑木林に捨てられたドラム缶のようだ

しかし毎日毎日履かれている
スニーカーは
鈍い光沢を放ちながら
少しづつ魂を宿していく
いつのまにかスニーカーという存在は
少しずつ消えてゆき

履いて脱ぐ
履いて脱ぐ

という感覚が無くなってゆき
それはもう軽やかで脈々と鼓動を打つ
有機物で包まれたような感覚に陥り
身体の一部分と
結合し融解し
だんだん意識の覚醒がはじまり
靄の中からうっすら生まれた遠い異国の地の人々を思い出しはじめる


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