オイフォリ/Lily Philia
 

それが露を湛え虹を孕みはじめると
やがてあたしは波にくるまれ
沖にさえいってしまうだろう。
春が死んだ庭では
鳥たちが祝魂歌をうたう。
あたしは
祈りを捧げるときよりもさらに背を丸め
海底にうずまる空っぽの貝のようにねむる。
あらゆるもののうえに
神さまと呼ばれるものがあらわれて
あたしのうえには
幾重にも広がった水の輪によく似た
同心円の金輪があった。
あたしは揺れていた。
天井の舟に乗るひとがそっとオールを手放す。
はじまりは右のオール。
おしまいは左のオール。
閉ざされていた要塞に
夏の風がふく。






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