秋空に慕情/モリー
並列運転でのろのろと自転車をこぐ
パーマのとれかかったあなたの髪を
ふやけた空が切り取ってる
あなたは時々私の二の腕をつまみ
ニヤリと笑ってみせた
季節は無情にも過ぎていくというが
それは時間が有り余った人間が言う自惚れだ、と
警句めいた支離滅裂をあなたは言う
私はこくりと頷いて
まだ冬の匂いはしていないから、と柔く言った
河川敷をぶらり歩いていたときに
私は沢山の発見をした
ススキの穂は稲より日を反射し輝くこと
実を付けない銀杏の木
コンクリに残る猫の足あと
刈られた草の生命力と独特のにおい
散歩のあとに抱く寂しさ
冬になっては困る、と眉間に
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