八重桜を真理だと仮定して/N.K.
向けるのか
真理である八重桜には
真理から逸れて目的的に進んでゆく群れは
どこに向かって進んでいると見えるのか
すぐそこに真理があるというのに
我々は大挙して真理から逸れて行く
急行待ちの時間
急行がすれ違う頃に
八重桜/仮定上の真理が
厚い花々のヴェールの奥に
枝々を伸びやかなほど広げていることに気づいて
自分の周りのささやかな上下左右にも目を止める
「真理は私を自由にする」
それで
身を固くしたままの上目づかいを止めて
私は手を動かしてみた
つまりは祈ったのであった
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