終わってしまった/寒雪
不安な気持ちを抱えたままの
夜の帳がそっとついた
ため息の白さが
ゆっくりと溶け込んでいった
静けさの宿る公園
街灯の下で一人
薄明るく照らされた足元に
頼りなげに浮かぶ灰色の影
右に一歩左に一歩
動いても動いても
足元から離れない影の
執拗さから逃れようと
軽やかなステップでサルサを踊る
ふと目にしたビルの谷間に
滲んで見える時計の針
何時頃からだろう
こんなにも時の足音を
鼓膜の奥にはっきりと捉えて
不安な心をかき消そうと
躍起になっているのは
振り返るとまだまだ我が物顔で
夜を闊歩する暗闇が纏うコートの
裾からちらりと見て取れる
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