君の手のひらに触れようとしても、怒らないで欲しい/ブライアン
うと、知らない夜があって悪いのか、と言われた。確かにそのとおりだ。今まで知らなかった夜に入ると、脛の傷は治った。と思う。何せ何も見えないのだ。傷口を触ると、小屋の壁面に触れているようだった。不思議に思い、顔をなぞってみると、気持ち悪いからやめろ、と百姓が言った。驚いて、見えているのか?とと聞くと、お前が触りまくっているのは俺の顔だ、と言った。だから、いつもの顔よりも骨ばっていたんだな。百姓に謝る。まあ、よくあることさ、夜の中ではな、と許してくれた。
夜を越えると、煙突が3本並んでいた。たぶん、川崎あたりの工場の煙突だ。赤と白に色分けされた石油タンクも次第に見えてきた。煙突からは黒い煙がもくもく
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)