逆指名/はだいろ
ほくごう君は
今年のドラフトで
どこの球団の指名にも応じると
自宅の四畳半の部屋で宣言した
ぼくの携帯電話で
ただし、
ジャイアンツにだけは行きたくないと
正直に語ってもくれた
それはそうだよね
ぼくもしみじみよくわかった
もうプロ野球に興味はなかったけれど
ほくごう君は
右手がちょっと不自由なので
利き腕でない左腕でぼくとキャッチボールをする
遠投ならば
ぼくよりも30メートルも先に届く
ほくごう君は
今年もドラフトで
どこの球団からも指名されることはなかった
プラスチックのバットと
オレンジ色のゴムボールさえあれば
どんな世界でも遊んでいられる
ぼくらだったのだ
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