握手会/はだいろ
 

街の本屋さんで
握手会をした
テーブルを一個出して
ぼくはぽつんと座っていた
なんの垂れ幕もなく
司会者もいない
道行くひとは通り過ぎてゆくばかり
交差点の信号が変わるたびに
秋が冬に近づいてゆくようだ
風船を手放した女の子が
握るなにかが欲しかったのか
お母さんが止めるのも聞かず
ぼくの前にやってきて
そっと手を差し出す
握手会はそれで終わり
テーブルをたたむと
ぼくが今日までに振った手が
いったいどれだけのものを
遠ざけてしまったのか
なるべく遠くの空を見た
雲は赤く未確認飛行物体が光った





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