てんとう虫/月山一天
 

ペッ、
地面に唾を吐いたら、
そこに
てんとう虫がいた。

羽を一枚無くしたのか
もう飛べないらしい。
それでも
一生懸命
どこかに行くらしい。

カラカラ
突然、踊りだした空き缶が
笑う。

もう一度下を向くと、
てんとう虫は
もう、
いない。

「ハァー」

と重たい煙をはいて
しゃがみこむ。

あ、バスが来た。

タバコを地面にねじ込もうとしたら、
そこにさっきのてんとう虫が
いた。俺の、
靴の隣で寄り添うように
もう
動かない。

俺は
消しかけのタバコを吸い殻に立てて、

またフラフラと

人ごみに向かって

歩き出す。


戻る   Point(5)