毎日ご褒美/殿岡秀秋
 
部屋の床が見えない
積まれた本の上に領収書の束が乗っている
捨てられそうなものは目を瞑って放りなげよう
無くなった物を想いだすことはないから

記念品や
参加賞も捨てる
ぼくは有名にならないというより
なれないと決めた

記念館が建設されるときのために
とっておこうとおもった
書きかけの原稿も
捨てる

買っただけで読まない本を
資料館に寄付する
一年間みなかった資料も
ダンボールに詰めてゴミに出す

心の部屋の床が見えてきて
風通しがよくなる
ずうっと昔にしまったきり忘れていた
大事なものが包装紙に包まれて見つかる

得した気分になる
さて死ぬまで何をしていこうか
自分に毎日
褒美をあげよう

合気道の稽古は
週三回のご褒美だ
稽古場に行くために仕事は
さっさと切り上げる

仲のいい人とおいしいものを食べる
家族と見知らぬ所に遊びにいく
荷物が減って褒美が増えて
どこへ行くにも足取りが軽くなる













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