ただいま/はだいろ
 
残業に疲れて、
地下鉄のつり革につかまって、
エスカレーターの列に並び、
街灯の下を、
とぼとぼと歩いて帰って行くと、
窓から、
あの子が、赤ちゃんを抱いて、
「パパ!」と手を振る。
それで、疲れはいっぺんに吹き飛ぶ・・・


なんて、夢を、
見たこともなかった。
残業に疲れて、
でもそれは空虚な、あまりに空虚な徒労で、
人生42年間を振り返っても、
なにひとつ、成し遂げたことはなく、
これからの人生を望んでみても、
いまの会社にしがみついて、
よくて課長止まり。
いや、いや、いや、
そうではなくて、
まるで、あんな課長や部長のように、
なってしまうの
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