八柱腰折れ屋敷十字舎房/一番絞り
 
でにして発作の兆候はこのときあったのだ。
指示されるがままKは分房監裏の壁際に立った。
年老いた男がKの正面を向いて三脚のカメラを構えた。
Kは笑った。
男が不審な表情をした。
 記念撮影デワナイノニ、コイツハ、ドウシテ笑ウノダ?
無言でそういっているような怪訝な表情だった。
その生真面目で不審な顔つきを見て、Kはまた笑いがこみ上げてきた。
男は眉をしかめてKをじっと見た。
しかしもう止めようがなかった。
止めようがなかった。
たまらなくおかしくて、腹の底からこみ上げてくるものがあった。
看守が拳銃を抜いて近づいてきた。
それでもKは発作的な笑いを抑えることができなかった
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