瓦礫の上から/伊月りさ
決意は
百円の紙ガムテープから
むかしの恋人に手渡された
曇りの夕方から
はじまる
助手席で息をひそめる狩人は
巻き戻せるようではいけない
くちびるは閉じる
それだけでは
時間はすぐに吹き飛ぶだろう、と
砂を流すように
さぁ
サイドミラーのなかで肥大化する
わたしをさらえ
初犯になるか
初犯にならなければ
はじまりは幼年の向こう側に落ちる
べらべらと
インフレーションの音で
読まれないほどあざやかな本を出し続けることすら
この部屋にさしこんでしまう
鼻はふさがない
服もぬがせない
ただ眼球だけ裏返して
おまえの戦後をさがしてくれ
たとえ
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