眼球を刳り貫き放り投げるバイト/かいぶつ
ップにと
一万円札を渡そうとしたとき
何も言わず無表情のまま
眼球を握っていない方の手で
一万円を受け取っていたのを見たときは
ははっ、そこはしっかりしてるんだな。って
初めて彼女の素を見たような気がした。
今夜もあと少しで
僕の眼球投げの出番だ。
それまでの間バーカウンターに座り
爪をやすりで研ぎながら
指をアルコール消毒し
右目を蒸しタオルに包んで温める
こうしておくと少し眼球の弾力がアップして
刳り貫きやすく壁からの跳ね返りも良くなるので
いつも念入りに温めているのだ。
スキンヘッドのバーテンダーの男が僕に話しかける。
「今日は何投?」
僕は答える。
「十二。自己ベスト更新するよ。」
「そうか、がんばれよ。」
「うん。まかして
今日はすごいの見せたげるから。」
まばらな拍手の中、僕の名が呼ばれた。
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