左目に可視化された睡蓮/灰泥軽茶
それは突然浮いていた
偶然斜め左から眺めた
モネの睡蓮は左目に浮かびあがり
そのまま浮いていた
美術館を出ても
淡く小さな睡蓮は左斜めに浮遊し
それにだんだん焦点が合わさると
どこか遠く異国の田舎をを散歩しているような気分になり
左目に可視化された睡蓮がだんだんと滲みはじめ
あらゆる色が私の体に流れ込んできた
ふと気づくと
モネが筆を置くのが見え
お茶をすすめてくれた
池に浮かぶ睡蓮はそっと掬えそうで
透き通る皮膚を水に浸しながら
手を伸ばすと
睡蓮はゆっくりくるくるまわり飛んでゆき
私はひとりで
美術館の外のベンチで
紅葉をぼんやり眺めていた
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