忘れ物/アヤメ
今日あの人は携帯電話を忘れていった
帰りは遅いのに どうするつもりかと
伝え忘れた身ながら 少し困って笑っている
あの頃の笑顔に戻れたらなあ
なんて思う事が何度もある
困った瞬間の笑顔でさえ尊く思える
まさかこんなことになるなんてね
誰も思わなかったんだよ
地が崩れて 海から死神がやってきて
美しかったこの世界を崩していった
あなたの携帯電話が今日もずっと鳴ってるんだ
いつもね、小さい恐怖を感じる時でさえ
あの時のことが思い出されるんだ
世界の終わりを感じてしまうんだ
小さい子に「嘘つきは泥棒だよ」っていうけれど
一瞬であなたとあなたのあなたを
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)