忘れ物/アヤメ
 

今日あの人は携帯電話を忘れていった
帰りは遅いのに どうするつもりかと
伝え忘れた身ながら 少し困って笑っている

あの頃の笑顔に戻れたらなあ
なんて思う事が何度もある
困った瞬間の笑顔でさえ尊く思える

まさかこんなことになるなんてね
誰も思わなかったんだよ
地が崩れて 海から死神がやってきて
美しかったこの世界を崩していった

あなたの携帯電話が今日もずっと鳴ってるんだ

いつもね、小さい恐怖を感じる時でさえ
あの時のことが思い出されるんだ
世界の終わりを感じてしまうんだ

小さい子に「嘘つきは泥棒だよ」っていうけれど
一瞬であなたとあなたのあなたを
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