狼の遠吠え/凪 ちひろ
愛されるより愛したいと思っていたのは
愛してくれる人がいたから
飢えた狼の側には 怖がって誰も近付かない
お日さまの周りには 人が集まるみたい
僕は影だ ずっと前から 君の影だ
嫉妬という悪感情が 染みのように 広がっていく
愛されたい愛されたい
夜の闇に 叫んだとて
狼の遠吠えは 日だまりの中の人々には届かない
本当は怖いくせに 本当はかまって欲しいくせに
感情の波形グラフを 押し殺して あいまいに笑う
さも一人で平気な人間のように
あいつらには分からない
っていうかむしろ 分かって欲しくない・・
固まったプライドと
守るべき自尊心の間で
僕は自らに鎖を課した
いつか一人でなくなったら
いつか誰かに愛されたら
心から笑うつもりだ
それまでは ああ それまでは
孤独な戦いを続けよう
誰にも見られない 崖の上で
狼の遠吠えを続けよう
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