詩集/水瀬游
私に微笑みかける
その表情から一転
黙々と詩集を読みふけるその引き締まった表情の中には
私には計り知れないほどの色々が渦巻いている
そこにあるのは
一人の今までの人生全て
あるいは一つの世界の全て
そこにはきっと
底知れぬ追憶と
果ての無い思索と
やりきれない感情と
言葉にならない至上のものとが渦巻いている
ちょうどこの宇宙を
様々の計り知れない物が渦巻いているように
その黒闇の全てを
我々が決して見果てぬように
貴方の知を
これまでを
今の思いを
私も決して知りえない
そうして
本を開くその前と同じように
私に向けられたその笑顔は
少しだけ 違って見えた
戻る 編 削 Point(0)