蝶/アヤメ
 

ずっと思っていた
ひとはいつから大人になるか

靴のサイズが24cmになって
Mサイズの服が着れるようになって
高いところから世界を見た

あの日見つけた蝶の行く先は
どこだったんだろう
さなぎから羽が生えて
けれどその羽はいつから来るの?

ずっと思っていた
ひとはいつから死んでいくのか

大好きな友達が死んで 黒い服を着て
初めて履いた黒い靴は重かった
いつか響かせてみたかったきれいな音も
無機質という覚えたての言葉に似つかわしい

あの日見つけた蝶の行く先に
大好きだった人たちを願っている
けれどわたしは今でさえ
見えないさなぎに羽を包まれたまま

わたしはもうじき大人になる
子ども時代の思い出を引きずったまま
でも振り返る自由があることを
過去にはばたく羽が教えてくれる

けど どうにもこうにもしたって
羽ばたく羽は自分で見ることはできないと
自由に見えた蝶がつぶやいた


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