銀杏ヨシ子さん/灰泥軽茶
ためらいがちに手を振るヨシ子さんは
しわくちゃのおばあさんで
もう生きているのか死んでいるのかわからない
毎年秋になると銀杏並木の下で
「ぎんなんヨシ子」という看板を掲げ
小さな屋台を引いて炒ったぎんなんと
焼酎のお湯割りのみをだしている
それがたいそう美味しいので
色んな人が話しかけたりするのだが
聞こえているのだか聞こえていないのだかわからない
笑みをかえしてくるだけだ
毎年冬も近づき銀杏の葉もなくなるとヨシ子さんも
ふといなくなるので来年も会えるのかなと
少し寂しさを感じながら銀杏並木を歩いていく
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