黒い車/藤鈴呼
 
眺めながら
ひっそりと 涙を 流す

自分の記憶が 消えた跡で
立派な車に 乗せられる理由が
分からないと 首を 捻る

きっと 残された者たちの
後悔なのでしょう

もっと こうして あげたかった
最期くらいは ちゃんと
見送って あげたいから

その 「ちゃんと」 を
形にする術を
他に 知らぬから

戒名や 花で 精一杯
故人を

そして これからの 
自分の未来をも
飾り立てるのです

もしくは 突然の 旅立ちに
心を 合わせる 準備期間

永い 作業には
蝋燭の 焔には
長かった 時間を
組み込める だろうから

組み込み
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