近所での小さな争い/殿岡秀秋
しらない、とぼくは想った。男は近所の婦人たちをからかって嫌われ、その夫たちに怒鳴られていた。
ぼくも怒鳴らなければならないのか。その場面を想像して暗い気分になった。本当にこの袋は、何が何でも彼の家にもどさなければならないものなのだろうか。
聖書では「右の頬を打たれたら左の頬を出せ」という。この言葉をこの場にあてはめたらどうなるのか。
コンクリートの袋をそのまま立てさせておく。そして燃えないゴミの日にもっていってもらうようにする。
ぼくが燃えないゴミの袋にいれてあげる。しかし、燃えないゴミの袋にくらべてコンクリートの袋は大きすぎる。ゴミ回収業者はもっていかないだろう。ならば市の指定業者に頼ん
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