川面の灯り/はだいろ
仕事帰りに、
病院へ、丸ノ内線から、
総武線に、乗り換えて、
7時の面会時間に、
ぎりぎり間に合う。
電車の窓は、
外が暗くなると、
自分の影を通さないと、
外の景色を見る事ができない。
彼女、誕生日、
駅でブーケをあわてて、
買っていったので、
びっくり、にっこりした、
嬉しそうな彼女の顔を見て、
なぜだか、ぼくの方が、
瞬間、泣きそうになってしまった。
安いケーキを、
ふたりで半分こして、
面会時間はすぐに終わり、
まだ何か食べると、
すぐに吐きそうになってしまう、
彼女にバイバイして、
総武線の各駅停車に乗る。
夜の川面に街の灯りが浮かび、
ぼくのこころを、
どこへ急がせることもない。
ディスクユニオンに寄って、
いつものように、
レコードを一枚買って帰る。
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