斜陽/イシダユーリ
 

電車が顔をかすめたのだ
アリガトウゴザイマス
ワタシタチハ
ニホンガスキデス

あなたは
両手を
あげて
砂浜を走っていたが
いまは
もう走れないだろう
ただ
波のような背中が
つきささる
小魚に
食いあらされる
かがやかしいたそがれ
いまは
もう走れないだろう
けれど
わきの下に
両腕を
いれられて
ベッドまで
運ばれている
アリガトウゴザイマス
アナタタチハ
イツモスバラシイ
レイギタダシイ
ヤサシイ
けれど
わたしたちは
あなたたちを
軽蔑しています
アリガトウゴザイマス
オカネハ
トドマリハシマセン

あなた
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