通行止/西天 龍
 
ずいぶんと長く走ってきた
満月がようやく山の端にかかるのに
まだ夜が明ける気配はない

そういえば
後席でにぎやかだった
家族はどこへ行ったんだろう
愛しい顔がどうしても思い出せない

理由のない懐かしさに戸惑いながら
立ち込める夜霧を振り払い
ハンドルを握る

突然「ここで出よ」と標識がまたたく
「そんな情報なんて」と舌打ちした瞬間
まばゆい光とともに夜が明け放たれ
すべてが理解できた

そう
もうアクセルもハンドルも要らない
車はゆっくりと左に折れ
ランプを出て行く



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