ひとりぼっちの女の子/オイタル
 
ひとりぼっちの女の子
机に前髪が落ちそうだ
あともう少し
針先ほどで届かないあなたの言葉のように
寂しさが髪の先に
しずくをつくっている

秋の薄日が 山の稜線にも
乗り捨てられた車のバンパーにも落ちて
空はアルミの板のように
光の太鼓を打っているというのに

窓から差し込む陽が
部屋の半ばで力なく折れて
ひっそりと床に着水する
幾本もの鉛筆が机に並んで
幻のように 芯先を踊らせる

ぼくが話しかけられるのは
挑戦するしまうまのことや比喩のこと
希望のカレーライスと椅子の軋みのこと
あなたの自責や後悔や空虚のことは
ぼくは 言えない

ひとりぼっちの女の子
ぼくは
言えない

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