依頼/オノ
もうほんとに嫌いな人がいて、我慢ならなかったんです。
それである祈祷師にお願いして、呪い殺せないかと聞いたん
ですが直接呪い殺すことはできなくて、私に「好きになった人が
死ぬ呪い」をかけることは可能だって言われました。
幸い私は好きな人がいなかったのでその呪いをかけてもらい、
その人を好きになろうと死ぬほど努力しました。
知れば知るほどおぞましい人間でしたが、自分を騙し騙し、
あれこれ後付けの設定を加えて心の中で無理矢理にそいつを
美化しました。直接殺すほうがよっぽどマシと思える日々でした。
そして半年がたったある日、私は街中で歩いているその人を
見るなりふと好きだと感じることができました。
そしてそう思うなりその人はふらっと前傾したかと思うと
その場に倒れ、そのまま帰らぬ人になってしまったのです。
搬送されていくその人を眺めているとふいに涙が流れてきて、
なんで泣くんだろうと思っているとポンと肩を叩かれました。
振り返るとあの時の祈祷師が笑いながら立っていて、
私に向かって他人事のような口ぶりで言いました。
「そりゃ、そうだろう。」
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