モノクローム/
「Y」
写真集の中の写真をうつした写真家は
もう死んでおり
この世界にはおらず
いまも死につづけていて
モノクロームに象られた
すべすべとした紙のなかに籠って
かたくなに孤塁をまもっている
その気配が
印刷された写真のなかにある
うつしとられたもの以上に
わたしの心をうごかすのです
写真集のなかでモノクロームに象られた橋頭堡では
死につづけている人が番をしていて
ひんやりとした余白の向こうから
こちらをじっと見返しているようなのです
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