夏葬/きりはらいをり
 


十月のがらんどうな空に

ただ風が吹き付ける

風は力尽きた木の葉をさらって

ああ、今度こそ

夏が遠ざかってゆく

私の足元に転がる屍はきっと

現存する最後の夏の証

短すぎる生涯をすべて賭けて

太陽の真下で歌う群れの中に

あの時おまえもいたのだろうか


墓標はなく

手向けに花も置いてやれないが


あの夏、この空の下

蝉よおまえは確かに生きた
戻る   Point(4)