/鯉
球技に戯れる子供たちが空を見たのはおそらく同じだっただろう。夕餉か朝餉かわからない痛みを伴ったにおいが排水溝やスモッグに漉されながら伝染する、犬のあばら、から受け渡された女子高生のむき出しのくるぶし、から投げ出されたランドセル、から鉄橋の哲学は息を潜め散文詩は整列する、とすれば、とすれば、としてから子供たちは息を殺す。待ち望んでいるそぶりを見せてはならない、と母親が浮気相手に対してしているように。団地の片隅では肉じゃがの向こうで肉布団が嬌声を上げている、と彼は知っているけれど知らないことになっている。子供たちは常に見透かしている。子供たちはゲームボーイを投げ捨てた。彼の直立する風情は葦に似て
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